2025年11月、GIGAZINEが報じた「AmazonがAIエージェントによるブラウジングを止めるようAIブラウザのPerplexityを法的に脅迫」という記事が話題になっています。 AmazonがAIブラウザ「Perplexity Comet」に対して、「AIエージェントによる自動ブラウジングがAmazonの利用規約に違反する」として停止命令を送付したというものです。
■ アマゾンが守ろうとしているもの
記事によると、PerplexityのCometはユーザーが「AIに話しかけるだけで」Amazonの商品を比較・購入できる仕組みを備えています。 Perplexityはブログでこう述べています。
「Amazonは分かりにくいオファーで購買意欲をそそることに重きを置いているため、AIアシスタントを用いた効率的な購入を好まない」(GIGAZINE記事より引用)
Amazonは、AIエージェントによる操作が「広告やスポンサー付き検索結果をバイパスしてしまう」ことを問題視しているようです。 つまり、Amazonが守りたいのは“ユーザー体験”ではなく“広告モデル”だという構図が浮かび上がります。
■ それは本当にユーザーのためなのか?
重要なのは、PerplexityのクローラーがAmazonを巡回しているのは、ユーザーの指示によるものだという点です。 ユーザーが「Amazonでこれを探して」と言った結果として、AIが代理でアクセスしているに過ぎません。 つまり、AIエージェントはユーザーの延長線上にあり、ユーザーの意思そのものです。
Amazonは「世界で最も顧客中心の企業」を標榜していますが、今回の対応はむしろその理念に逆行しています。 顧客の“手足”となるAIを締め出すことは、ユーザーの利便性を制限する行為に他なりません。
■ イノベーションのジレンマの典型、そしてGoogleとの対比
この構図はまさに「イノベーションのジレンマ」です。 Amazonは自社の成功モデル──すなわち広告収益と囲い込みによる最適化体験──に縛られ、 AIによって生まれる新しい「購買のあり方」に適応できなくなりつつあります。
一方で、Googleは異なる選択を取りました。 同社は検索連動型広告という莫大な利益源を持ちながらも、それをあっさりと部分的に手放し、 検索結果の最上位をAIがまとめる「AI Overview(AIモード)」を導入しています。
これは、既存ビジネスを守るために新技術を抑えるのではなく、 新技術を中心に据えて自らの構造を再定義した例です。 勝算があるからこその大胆な舵切りであり、 ジレンマから一歩抜け出した企業の象徴的な姿に見えます。
「大企業は法的脅迫や威嚇を用いていじめのようにイノベーションを阻止している」 (Perplexity公式ブログ “Bullying is Not Innovation” より)
この引用は、Amazonだけでなく、変化を恐れるすべての組織への警鐘とも言えます。
■ HALDATAとしての見解
私たちHALDATAも、AIが人の意思を媒介する「エージェント時代のUX」に取り組んでいます。 レビュー解析やECチャットエージェント(TV Agent)を通じて、 ユーザーが“知りたいことを最短で知る”体験を実現しようとしています。
AIが人の代わりに意思決定や操作を行う世界では、 「どのAIが代弁するか」がブランドの信頼そのものになります。 もしこの流れを止める企業が増えれば、AI社会の発展は数年遅れるでしょう。 だからこそ、今必要なのはコントロールではなく共存です。 AIがアクセスすることを前提に設計されたAPIや透明なルールこそが、次のインターネットを形づくると考えています。
■ 終わりに:AIは脅威ではなく拡張
AIエージェントは「人間の代わり」ではなく「人間の拡張」です。 AmazonがPerplexityを拒むのではなく、AIエコシステムの一部として共生する道を選ぶことを願います。
企業が“自社の都合”ではなく“ユーザーの行動”を中心に再設計できるか── 今、世界中のプラットフォームがその分岐点に立っています。
HAL hatanaka