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SmolAgentsとLangGraphのツール呼び出し比較 ~違いと使い分け~

はじめに:

AIエージェントの開発では、どのように外部ツールを呼び出すかが重要なポイントになります。本記事では、SmolAgentsとLangGraphという2つのフレームワークに焦点を当て、それぞれのツール呼び出し方法の違いを解説します。初心者にも分かりやすい一般的なトーンで、具体的なケーススタディを交えながら、どのような場面でどちらを使うのが適しているかをご紹介します。

SmolAgents: LLMに柔軟性を委ねるツール呼び出し

特徴:
SmolAgentsは最小限のコードで使えるシンプルなエージェントフレームワークです。エージェントの頭脳として大規模言語モデル(LLM)を使い、LLMが自ら判断して外部のツールを呼び出して実行します。例えば、Web検索ツールや計算ツールを用意しておけば、LLMが会話の内容に応じてそれらを使うコードを生成し、実行してくれます。しかし、LLMにツール呼び出しを任せるため、特定のツールを確実に使わせる方法はありません

ツール選択の仕組みと課題:
SmolAgentsでは、LLMが現在のタスクに必要と感じたツールだけを選んでコード内で呼び出します。そのため、たとえば「必ずこのツールを使ってほしい」としても、LLMが必要と判断しなければそのツールは呼び出されません。開発者ができるのは、ツールの名前や説明をできるだけ明確かつ具体的に記述することです。こうすることで、LLMが目的を理解し、適切な場面で選択する可能性を高めることができます。しかし、あくまでLLMの判断に委ねるため、ツール使用を完全に強制する保証はない点に注意が必要です。

ケーススタディ①: SmolAgentsに適したシナリオ
初心者向けの例として、旅行プラン作成エージェントを考えます。ユーザーが「来月東京に旅行に行くのでプランを立てて」と依頼すると、SmolAgentsを使ったエージェント(LLM)は、旅行プラン作成に必要な情報を自律的に集めます。たとえば、行程を決めるためにWeb検索ツールを呼び出したり、天気情報APIを使って天候を調べたりするコードを生成し実行するかもしれません。開発者はあらかじめ「WebSearchTool」や「WeatherAPI」といったツールを用意し、その説明に「観光情報を検索する」「指定日の天気を取得する」と明記しておけば、LLMはユーザーの要求に応じて自動的に適切なツールを選び出します。こうしたLLMの創意工夫による柔軟なツール組み合わせは、答えを出すための手段が一意に定まらないオープンなタスクに向いています。

LangGraph: ノードとエッジで決め打ちするワークフロー

特徴:
LangGraphはエンタープライズ向けのワークフローオーケストレーションフレームワークです。処理手順をノード(処理の単位)エッジ(遷移条件)で明示的に定義し、エージェントの流れをあらかじめ決めておくことができます。LLMも利用しますが、LLMが勝手に手順を変更することはなく、あらかじめ定めたルールに沿って処理が進行します。たとえば、「まずユーザーの質問を解析するノード→次に計算が必要なら計算ノード→最後に回答生成ノード」という流れをグラフとして構築し、その通りに実行されます。

強みと課題:
LangGraphの強みは、複雑な分岐やマルチエージェントの協調動作が求められる場合でも、確実に意図した手順を踏ませられる点にあります。また、監査ログの取得やモニタリング機能が充実しており、信頼性が求められるシステムに適しています。一方、課題はフロー管理の煩雑さです。処理の分岐が増えるほどノードとエッジが複雑になり、遷移条件の管理が大変になる場合があります。実際、複雑なマルチエージェント環境ではデバッグに時間がかかるケースも見受けられます。

ケーススタディ②: LangGraphに適したシナリオ
具体例として、カスタマーサポート用チャットボットを考えます。このボットはユーザーの問い合わせに対して決められた手順で対応します。たとえば:

  1. 受付ノード: 挨拶をしてユーザーIDを確認する。
  2. 分類ノード: ユーザーの問い合わせ内容を解析し、「請求関連」「技術的な質問」「その他」に分類する。
  3. 分岐ノード: 分類結果に応じ、請求対応ノードや技術サポートノードなど、適切な処理に遷移させる。
  4. 回答ノード: 最終的に回答を生成し、ユーザーに提示する。

LangGraphを用いれば、この一連の流れをグラフ構造として厳密に定義できます。たとえば、分類ノードから請求対応ノードへ遷移するエッジには「問い合わせが請求関連の場合に遷移」といった条件を設定し、ユーザーがどんな質問をしても必ず定められたフローに沿って対応が進むようにします。また、後からどの経路を通って回答が生成されたかを検証することも容易です。ただし、問い合わせカテゴリが増え、対応フローが複雑化すると、その分設定やテストに手間がかかる点には注意が必要です。

どちらをいつ使うべきか?

SmolAgentsが適しているケース:

  • 迅速なプロトタイピング: 最小限のコードで開始できるため、すぐに動作するエージェントを作りたい場合に最適です。
  • オープンエンドなタスク: 明確な手順が決まっていないクリエイティブなタスクでは、LLMの柔軟な判断に任せることで多様な要求に応えられます。
  • コードベースの処理: LLMが自らコードを生成し実行するような場合に便利です。

LangGraphが適しているケース:

  • 複数エージェントの協調作業: 複数のエージェントが連携する大規模なシステムでは、厳密なワークフロー管理が効果を発揮します。
  • 厳格な手順管理が必要: コンプライアンス重視の環境では、定められた手順を確実に実行するためにLangGraphが有用です。
  • 複雑な依存関係のあるタスク: 複数ステップや条件分岐が絡む処理において、全体の流れを明確に設計できます。

まとめ: 柔軟性のSmolAgents vs. 厳密性のLangGraph

SmolAgentsとLangGraphは、一見似た「LLMエージェント」を作るためのツールですが、その設計思想と適用シーンは大きく異なります。SmolAgentsはLLMの柔軟性を活かし、素早く動くプロトタイプを作るのに向いていますが、ツール呼び出しがLLMの判断に依存するため、完全な制御が難しい面があります。一方、LangGraphはあらかじめ定めたワークフローに沿って処理を進めるため、確実な手順管理が求められるシステムに最適です。ただし、複雑なフローになると管理が煩雑になり、メンテナンスコストが増す点も留意する必要があります。

プロジェクトに応じて「柔軟性」と「制御性」のどちらを重視するかを検討し、SmolAgentsとLangGraphを使い分けることで、LLMエージェントの力を最大限に引き出すことができるでしょう。

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